「確信犯」という言葉は、日常会話やSNSでとてもよく使われる表現です。
しかし、多くの人が思い浮かべる「確信犯」は、
“悪いことだと分かっていながらやる犯人” という意味──。
実はこれは 誤用 で、本来の意味とはまったく違います。
本来の「確信犯」とは、
“道徳的・思想的に正しいと信じて行われた犯罪” のこと。
今回の記事では、
この「確信犯」という言葉の本当の意味、なぜ誤用が広がったのか、
現代でどう使われているのか、ビジネスでの注意点まで、
分かりやすく深掘りします。
「確信犯」の本来の意味
「確信犯」は、もともと 宗教・倫理学・政治思想 の文脈で生まれた言葉です。
本来の意味
“自分の行為が道徳的・思想的に正しいと確信して行う犯罪者”
ポイントは「正しいと信じていること」
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本人は悪いことをしているつもりがない
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むしろ「社会のため」「正義のため」と信じている
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行動の根拠に“強い信念=確信”がある
例
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宗教的信念から違法行為に走る
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政治思想のため破壊活動を行う
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「世の中を変えるためには必要だ」と信じて犯罪を行う
ここが、現代の誤用と大きく異なるポイントです。
なぜ誤用が広まったのか?その背景
日本では、1980〜90年代頃から「確信犯」の意味が大きく変化しました。
①「罪を確信している犯人」という誤解
「確信」という言葉が
“悪いと分かっている・確信している”
という意味に連想されやすかったことが要因です。
②ニュース番組の影響
ワイドショーやドラマで、
「確信犯の犯行です」「確信犯的な行動」
といった使い方が定着し、視聴者に違う意味として浸透しました。
③“悪びれない態度”と結びついた
例えば、
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平気で遅刻する
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禁止されていることを堂々とやる
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いたずらを悪びれずに繰り返す
このような人を指して「確信犯だよね」と使われるようになり、
“わざと悪いことをする人” の意味が一般化してしまったのです。

現代の「確信犯」:辞書も二重定義に
興味深いのは、現在の辞書が 本来の意味と誤用の意味を併記 していることです。
本来の意味
→ 道徳的・思想的に正しいと信じて行う犯罪
誤用として一般化した意味
→ 悪いと知りつつあえてやる人
→ わざとルールを破る人
→ 悪びれない態度をとる人
言葉の変化としては面白いですが、
文章・ビジネス・学術では誤解を招きやすい表現です。
ビジネスで使う際の注意点
「確信犯」はビジネスにおいて 非常に扱いが難しい言葉 です。
① 相手を侮辱する可能性が高い
「あなたのミスは確信犯ですよね?」
→
“わざとやっている” と決めつけていることになるため危険。
② 本来の意味で使うと伝わらない
ビジネスの場では本来の意味で理解されない可能性が大。
③ 替えられる表現を使う方が安全
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「意図的な行為」
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「故意によるもの」
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「自発的な判断による行為」
「確信犯」は曖昧さを生むため、文書には不向きです。
例文で見る「本来の意味」と「誤用」の違い
本来の意味
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「彼の行為は、社会改革を目的とした確信犯といえる。」
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「宗教的信念に基づく確信犯的な行動だった。」
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「本人は正義と信じて行っており、まさに確信犯である。」
誤用(一般的な使われ方)
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「あいつ、遅刻の確信犯だよね。」
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「そのイタズラ、完全に確信犯じゃん。」
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「ルール破りの確信犯みたいな行動は困る。」
ビジネスで避けるべき例
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「このミスは確信犯でしょう?」(強い侮辱)
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「確信犯的に資料を省略したのですか?」(注意)
まとめ
「確信犯」は本来、
“道徳的・宗教的・政治的に正しいと信じて行われた犯罪” を指します。
しかし現代では、
“わざと悪いことをする犯人” という誤用が広く定着しました。
文章やビジネスでは意味が曖昧になりやすいため、
使用場面には十分な注意が必要です。

