「うだつが上がらない」という言葉は、
“パッとしない”“出世しない”“生活が好転しない” という意味で日常的にもよく使われます。
しかし、この表現の面白いところは、
もともと 「うだつ」という建物のパーツが語源である点です。
今回は、この言葉がどうして「立身出世しない」という意味になるのか、
その歴史・語源・文化背景、そして現代の使われ方まで、
分かりやすく、そしてちょっと面白く深堀りしていきます。
「うだつが上がらない」の基本の意味
「うだつが上がらない」とは、
“生活や仕事が向上しない・出世しない・ぱっとしない”
という意味です。
具体的には、
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昇進しない
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収入が増えない
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勝負どころで結果につながらない
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なんとなく地味で目立たない
といった状態を指します。
現在では「努力はしているが、物事がなかなか好転しない」というニュアンスで使われることが多い言葉です。
語源が面白い!「うだつ」とは何か?
実は「うだつ」は、
日本の伝統建築における“防火壁”の一部のことを指します。
より正確には、
民家や町家の 屋根と屋根の境目に立てる小さな壁のような構造物。
お隣との火事の延焼を防ぐために作られました。
「うだつ」を上げるにはお金が必要
この“うだつ”を建てるには、
普通の家よりも 建築費用が高くなるため、経済力の象徴でした。
つまり昔は、
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「うだつを立派に作れる=裕福な家」
-
「うだつが作れない=貧しい家」
という構図があったわけです。
この背景が転じて、
“うだつが上がらない=生活に余裕がなく、出世もしない”
という意味が生まれたのです。
歴史の中の「うだつ」:商人文化との深い関係
特に「うだつ」が象徴的だったのは、江戸〜明治期の商人の町です。
有名な例としては 徳島県美馬市のうだつの町並みなどがあります。

商家では、
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繁盛して儲かった店は立派な“うだつ”を建てる
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周囲の商人に“繁盛ぶり”を示す目印になった
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中には装飾を施して、見栄の張り合いになることも
という文化が存在していました。
つまり ステータスを示す建築物だったのですね。
「うだつが上がらない」は、この商人文化と経済事情が密接に絡んでいるため、
語源としても非常に面白い表現なのです。
現代での「うだつが上がらない」のニュアンス
現代では物理的な“うだつ”を知る人は少なくなりましたが、
表現としては次のようなニュアンスで使われています。
① 出世しない・成果が出ない
会社で何年経っても昇進しない、目立った実績がない状態。
② 地味でぱっとしない
派手な成功や転機がなく、現状が変わらない状態。
③ 努力しているのに報われない
やる気や能力があるのに、運や環境が追いつかない場合にも使われる。
④ 自分で使うと“自虐的で柔らかい”
「俺はうだつが上がらなくてねぇ」と使うと、
ほんのりユーモアのある自己評価になる。
ビジネスシーンでの使い方と注意点
ビジネスでも使われることがありますが、注意が必要です。
① 相手に使うと失礼
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「あなたはうだつが上がらないね」
→ 完全にNG。侮辱にあたる。
② 自分に使うのはOK、むしろ柔らかい
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「自分はまだうだつが上がっていませんが、精進します」
→ 謙虚な姿勢として使える。
③ 文書では少し古風
メールや企画書に出てくると固さが際立つので、
口語に向いた表現と言える。
「うだつが上がらない」の例文
日常会話
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「どうも最近、仕事が忙しいだけで、うだつが上がらないんだよね。」
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「努力してるのに結果が出ない。うだつが上がらないなあ。」
自分をへりくだる
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「まだまだうだつが上がらない身ですが、よろしくお願いします。」
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「うだつが上がらない新人ですが、一生懸命がんばります。」
説明・ナレーション風
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「彼は真面目だが、どうも長年うだつが上がらないままだった。」
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「その町は、人々が“うだつが上がること”を夢見て働く商人の町だった。」
まとめ
「うだつが上がらない」とは、
“生活や仕事が向上しない・出世しない・ぱっとしない”
という意味。
語源は、昔の町家に設けられた “うだつ(防火壁)” にあり、
それを立派に作ることができない=経済力がない
という社会背景が現代の意味につながっています。
歴史や文化を知ると、
普段使っている表現がぐっと面白く感じられますね。

