「確認しておきます」「伝えておきます」「やっておきますね」。 こうした言い回しを、ビジネスでも日常でも耳にしたことがあると思います。 一見すると、前向きで丁寧な言葉。でも、本当に“やる”つもりがあるのかは、正直あいまい。
今回は、そんな「〜しておきます」という日本語表現に込められたニュアンスについて、 本音と建前の間を探ってみましょう。
「〜しておきます」は前向きな意思表示?
「〜しておきます」という言葉は、基本的には**「事前に準備しておく」**という前向きな意味合いを持っています。
たとえば:
- 「資料を印刷しておきます」→ 実際に印刷する準備をする
- 「先方に確認しておきます」→ 連絡を取るつもりがある
つまり、やる意思はあるし、やる予定ということ。 ただし、その実行タイミングは曖昧で、すぐなのか、後日なのか、期限が明示されていないケースも多いのが特徴です。
実は“保留”や“やんわり断る”ためにも使われる
「〜しておきます」は便利な言い回しであるがゆえに、 やる気がないときにも使える表現になってしまっている面もあります。
たとえば:
- 「あとで確認しておきます」→ 実際には確認しないことも
- 「検討しておきます」→ 断るつもりでも、その場を和らげるための言い回し
こうした使い方がされると、 「〜しておきます」=“やるかどうか分からない”曖昧表現となってしまいます
ビジネスにおける「〜しておきます」の受け取り方
ビジネスの現場では、「〜しておきます」は相手に安心感を与える言葉として使われますが、 その一方で、実行責任がはっきりしないというリスクもあります。
- 進捗確認ができない案件で、「やっておきます」と言われると、それ以上追いにくい
- 依頼する側も、断られているのか受け入れられているのかが曖昧
つまり、便利な言葉ではあるものの、信頼関係によって意味が変わる言葉でもあるのです。
類似表現との違い:「〜します」と「〜しておきます」
表現 | ニュアンス |
---|---|
やります | 明確な実行意志 |
やっておきます | やるつもりはあるが、少し余裕・曖昧さも含む |
検討しておきます | 断る可能性を含んだ曖昧な保留 |
つまり、「〜しておきます」は、“やる”とは言い切らず、“逃げ道”を残した表現でもあるのです。
日本語のあいまいさを体現する表現のひとつ。
言う側も悪気があるわけではなく、空気を読んだり、丁寧に対応しようという気持ちが働いていることもあります。
では、どうすれば誤解を減らせるか?
- 言う側:期限や具体的な行動を補足する
- 例:「明日中に確認しておきます」
- 聞く側:「いつごろになりそうですか?」と具体的に尋ねてみる
コミュニケーションを円滑にするには、言葉の裏にある温度感を読み解くことも必要なのです。
まとめ
「〜しておきます」は、 一見やる気があるように見えて、実は“やらない”場合もある、あいまいな便利表現。
- 使う側は誠意と明確さを意識する
- 聞く側はその言葉に甘えず、確認を怠らない
この両方があることで、言葉のすれ違いを減らすことができます。
「〜しておきます」と言われたとき、あなたは信じますか? それとも、少しだけ疑ってみますか?