電話が返ってこない。
会議が進まない。
話題が堂々巡り。
そんな時、ふと口をついて出る言葉。
「いや、埒があかないな」
しかし、この言葉にはただの「停滞」ではなく、
“出口の見えない袋小路感” が込められています。
そして、この「埒(らち)」が何を意味しているかを
説明できる人は、意外と少ないのではないでしょうか。
「埒(らち)」の意味と語源:元は“柵”のこと
埒(らち)= 柵・仕切り・囲い
もともとは神社の境界や、馬場の仕切りを表す言葉でした。
特に競馬の場面では、
スタート地点や馬の方向を誘導するための柵を指していました。
では、なぜ “進捗ゼロ” の意味になったのか?
柵(埒)が開かない
→ 馬が走り出せない
→ 競技が始まらない
→ 決着がつかない
この流れが比喩になり、
物事が始まらない=埒があかない
という意味が成立したのです。
筆者的深掘り — 「柵」を“閉塞感”として捉えた日本語の妙
「埒があかない」は、他の停滞表現とは違います。
| 表現 | ニュアンス |
|---|---|
| 進まない | 単純な遅れ |
| 手詰まり | 手段が尽きた |
| ラチがあかない | 構造的に動かない |
ポイントは、
自分の努力ではどうにもならない状況
を嘆く言葉だということ。
-
手続きが複雑
-
決裁が降りない
-
“仕組み”が動かない
そのイライラを象徴しているのです。
これは、
昭和社会が抱えていた「縦型組織の遅さ」や根回し文化の中で育った言葉とも言えます。
「昭和のイライラ」を表す言葉だった
電話連絡、郵便、FAX。
情報の速度が遅い時代、
物事が進まない焦りは今より大きかったはずです。
-
「誰が許可するのかわからない」
-
「担当部署に回される」
-
「書類が戻ってこない」
こうした構造的停滞に対する
昭和独特のイライラを、
「埒があかない」は見事に表現していました。
いまの人が使わなくなったのは、
言葉の古さだけが理由ではなく、
📌 スマホとデジタル化 → 自己解決が進む
📌 個人が直接動く時代 → 柵が減った
社会の構造が変わったからかもしれません。
誤用と現代で使うときの注意点
実は、肯定形
「埒が明く(らちがあく)」
という表現も存在しますが、普段ほとんど使われません。
ビジネスで使うと
「状況が深刻だ」と伝わる場合があります。
🟡 使って良いシーン
-
長期的な停滞
-
自分だけでは動かせない案件
-
構造的な問題
🔴 避けたいシーン
-
簡単に解決できる作業
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相手の怠慢を責める文脈
重い表現であることを理解した上で使う必要があります。
まとめ:言葉の「柵」を開けられるのは誰か
「埒があかない」は、
ただのイライラの吐き出しではなく、
-
仕組み
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人間関係
-
組織
-
時間
こうした“柵”の存在を示す言葉でした。
あなたの周りに、開かない柵はありませんか?
その柵を開けられるのは、案外、あなた自身かもしれません。

過去に自分の意見を頑固に通そうとする人に対して、説得を試みましたが、全く埒があきませんでしたね。そんなときは他人の力を借りてその柵を開けましょう。

