「イシュー」って、つまり何?
最近のビジネスシーンでよく耳にするようになったカタカナ語「イシュー」。
「その話、イシューじゃないよね」とか「まずイシューを明確にしよう」といった使い方をされることが多いですが、
実際のところ、「イシュー=問題」「イシュー=課題」では少し違う…と感じる人も多いのではないでしょうか。
この記事では、「イシュー」という言葉の本来の意味や使い方を解説しながら、
よく混同されがちな「課題」との違いについて、ビジネス現場での実例も交えてわかりやすく整理します。
「イシュー」の意味とは?
「イシュー(issue)」は、もともと英語で「論点」「争点」「発行」などの意味を持つ単語です。
日本語でビジネス用語として使う場合は、以下のような意味になります。
イシューの定義(ビジネス文脈)
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本質的な問いや論点
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意思決定や戦略に関わる重要なテーマ
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解くべきかどうかを判断する前の“考える価値のある問題”
たとえば、「売上が伸びない」という状況があるとき、
表面的には「広告を増やそう」「価格を下げよう」といった“対策”が浮かびがちですが、
「本当に考えるべきこと=イシュー」は「顧客ニーズが変化していないか?」といったより本質的な問いになります。
「課題」とは何か?イシューとの違い
一方で、「課題(かだい)」という言葉は日本語で広く使われるビジネス用語ですが、
こちらはもっと実務的・行動的なニュアンスを持っています。
課題の定義
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解決すべきことが明確になったタスクや目標
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現状と理想とのギャップを埋めるために必要なアクション項目
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進捗状況や成果が測定可能な具体的なテーマ
たとえば、
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「納期が遅れやすい」 → 課題:タスク管理の精度を上げること
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「チームの連携が弱い」 → 課題:ミーティング頻度を見直すこと
イシューとの違いまとめ(ここまでの要点)
項目 | イシュー | 課題 |
---|---|---|
目的 | 論点の明確化 | 行動の明確化 |
抽象度 | 高い(考えるべきこと) | 低い(やるべきこと) |
タイミング | 問題の本質を探る段階 | 解決に取りかかる段階 |
特徴 | 問う価値があるかどうかが重要 | 対処が可能かどうかが重要 |
「イシュー」と「課題」の違いを比較表で整理
ここまでの内容をもとに、「イシュー」と「課題」の違いを表でまとめてみましょう。
比較項目 | イシュー | 課題 |
---|---|---|
定義 | 考える価値のある論点・問い | 解決すべき具体的な問題やタスク |
抽象度 | 高い(本質に近い) | 低い(具体的) |
発生段階 | 問題提起の前段階 | 問題が明確になった段階 |
解決対象 | 考えるべきかを含む | すでに解くと決めたもの |
例文 | 「そもそもニーズが変化しているのでは?」 | 「営業プロセスを改善する必要がある」 |
補足:
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イシューは「問いを立てる力」につながり、
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課題は「行動に落とし込む力」に関係します。
実際の使い方|ビジネスシーンの例
会議での使い分け
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誤:「今後のイシューはスケジュールの調整です」
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正:「今後の課題はスケジュール調整。イシューは“なぜ予定が遅れるのか”の要因分析」
→ 「イシュー」と言いながら「課題」を話しているケースは多く、意識して言葉を分けると議論の質が上がります。
報告書・プレゼン資料での使い分け
NG例:
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イシュー:納期が遅れている
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解決策:スケジュールを見直す
OK例:
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イシュー:納期の遅れの背後にある構造的な原因は何か?
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課題:進行管理の曖昧さ/連携不足/役割分担の見直し
→ イシューは考えるべき問い、課題は取り組むべき作業と整理するのがポイントです。
なぜ「イシュー思考」が重視されるのか?
近年、ビジネスやプロジェクトの現場では、**イシューを明確にする力(=イシュー思考)**が重視されています。
その理由は以下の通りです:
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表面的な課題解決に追われて、根本的な問題が残るケースが多いため
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資源(時間・人材・コスト)を集中すべき場所を見極めるため
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無駄な対策を減らし、「本当に意味のある行動」に結びつけるため
有名な書籍より:
『イシューからはじめよ』(安宅和人 著)は、まさにこのテーマに特化した名著で、
「解くべきでない問題を解かない」ことの重要性を説いています。
まとめ
「イシュー」と「課題」は似ているようで大きく異なります。
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イシュー:考える価値がある論点・本質的な問い
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課題:明確になった問題・解決すべき具体的なタスク
この2つの違いを意識して言葉を使い分けることで、
議論や報告の質が一段階深まり、成果に直結する行動が選びやすくなります。
次に何かを考えるとき、
まずは「これってイシューか、それとも課題か?」と問いかけてみましょう。
その一歩が、的確な判断と効率的な仕事につながっていくはずです。