「せーの、よいしょ!」
重い荷物を持ち上げる時、自然と口から出る掛け声です。
一人で立ち上がる時にも、腰を上げながら思わず、
「よいしょ」
と言ってしまうことがあります。
若い頃はあまり意識しませんでしたが、年齢を重ねると、この「よいしょ」が妙に身近な言葉になってきます。
ただ、「よいしょ」にはもう一つの顔があります。
それが、
人を持ち上げる「ヨイショ」
です。
上司をヨイショする。
相手を気分よくさせるためにヨイショする。
同じ「持ち上げる」でも、荷物を持ち上げる「よいしょ」と、人を持ち上げる「ヨイショ」では、ずいぶん温度が違います。
今回は、「よいしょ」の意味や語源、掛け声としての力、そして人間関係の中で使われる「ヨイショ」について考えてみたいと思います。
「よいしょ」とは?
「よいしょ」は、力を入れる時や体を動かす時に使う掛け声です。

たとえば、
- 重い荷物を持ち上げる時
- 椅子から立ち上がる時
- 何かを押したり引いたりする時
- みんなで力を合わせる時
などに使われます。
この「よいしょ」には、単なる音以上の意味があります。
体に力を入れるタイミングを作り、自分自身に
「今から動くぞ」
と合図を送る言葉でもあるのです。
「よいしょ」の語源ははっきりしない
「よいしょ」の語源には、いくつかの説があります。
相撲の四股を踏む時の掛け声に由来するという説。
作業歌や掛け声の中から自然に生まれたという説。
また、「よいしょ」「えいしょ」といった、力仕事のリズムから広まったという考え方もあります。
いずれにしても、「よいしょ」は机の上で作られた言葉ではなく、体を動かす現場から生まれた言葉だと感じます。
荷物を持つ。
船を引く。
土を運ぶ。
人と力を合わせる。
そういう暮らしの中で、自然と口から出るようになった言葉なのでしょう。
体を動かす「よいしょ」
一人で立ち上がる時にも、つい「よいしょ」と言ってしまうことがあります。
特に年齢を重ねると、この言葉がよく出るようになります。
若い頃は、何も言わずにスッと立ち上がれました。
でも今は、腰を上げるにも少し気合いがいる。
その時の「よいしょ」は、恥ずかしいようでいて、実はとても合理的な言葉です。
声を出すことで呼吸が整い、動くタイミングが決まります。
「よいしょ」は、体を動かすための小さなスイッチなのです。
「せーの、よいしょ!」には協力の温度がある
一人で使う「よいしょ」もありますが、私は「せーの、よいしょ!」という掛け声に、どこか温かさを感じます。
重いものを一人では動かせない時、何人かでタイミングを合わせます。
「せーの」
で息を合わせ、
「よいしょ!」
で一気に力を入れる。
この時の「よいしょ」は、単なる気合いではありません。
協力の合図
です。
一人では無理でも、みんなで合わせれば動くものがある。
そう考えると、「せーの、よいしょ!」には、なかなか良い響きがあります。
人を持ち上げる「ヨイショ」
一方で、「よいしょ」は人間関係の中でも使われるようになりました。
それが、
- 上司をヨイショする
- 相手をヨイショする
- ヨイショがうまい人
という使い方です。
この場合の「ヨイショ」は、相手を褒めたり、持ち上げたりして、気分よくさせることを意味します。
本来は荷物を持ち上げる掛け声だったものが、人を持ち上げる言葉に変わったわけです。
面白い変化ですね。
ヨイショされて嬉しい人、嫌な人
人を持ち上げる「ヨイショ」は、少し扱いが難しい言葉です。
ヨイショされて嬉しい人もいます。
褒められれば気分が良くなる。
自分を認めてもらえたように感じる。
そういう人には、ある程度のヨイショも潤滑油になるのでしょう。
しかし、私は正直なところ、ヨイショされるのはあまり好きではありません。
本心で言っているのか。
機嫌を取られているだけなのか。
裏に何か目的があるのか。
つい考えてしまうからです。
もちろん、素直に喜べばよいのかもしれません。
でも、言葉の裏を読んでしまう性格なのでしょうね。
昭和の職場には「ヨイショ文化」があった
昭和の職場には、今よりも上下関係がはっきりしていました。
上司を立てる。
先輩を持ち上げる。
場の空気を壊さないように、少し大げさに褒める。
そんな「ヨイショ文化」があった気がします。
人によってはそれを処世術と呼ぶかもしれませんし、
人によっては「お世話」や「気遣い」と受け取るかもしれません。
お節介焼きとは?世話好きな人の心理と昭和との関係
でも書きましたが、日本人には昔から相手を気にかける文化がありました。
もちろん、それが職場の人間関係を円滑にすることもありました。
「よいしょ」は自分を持ち上げる言葉でもある
それでも、私は「よいしょ」という言葉自体は好きです。
特に、自分に向ける「よいしょ」は良い言葉だと思います。
腰を上げる時の「よいしょ」。
気持ちが重い時の「よいしょ」。
やる気が出ない時の「よいしょ」。
それは、自分を無理やり励ますというより、少しだけ持ち上げる言葉です。
落ち込んだ気持ちを、ほんの少し上に持ち上げる。
重くなった体を、少しだけ前へ動かす。
そう考えると、「よいしょ」は年齢を重ねるほど必要になる言葉なのかもしれません。
まとめ:「よいしょ」は持ち上げる言葉
「よいしょ」は、力を入れる時や体を動かす時に使う掛け声です。
語源には諸説ありますが、相撲や力仕事、作業のリズムの中から生まれた言葉だと考えられます。
また、「ヨイショする」という形で、人を持ち上げる意味にも使われるようになりました。
ただし、人を持ち上げるヨイショは、相手によって受け止め方が違います。
嬉しい人もいれば、私のように少し身構えてしまう人もいます。
だからこそ、人に使う時は慎重に。
でも、自分に向ける「よいしょ」は、もう少し気軽でいい気がします。
立ち上がる時も。
重い気持ちを動かす時も。
今日を始める時も。
小さく「よいしょ」と声をかければ、自分を少しだけ持ち上げられるかもしれません。

