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【昭和の仕事場】最先端の「5Mエンジン」と、実家前の「ごえむさん」――新米フロントマンの忘れられない失言

5Mエンジンと「ごえむさん」|新米整備フロントが放った爆笑の失言 【一、思い出の引き出し】
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自動車ディーラー、サービスフロントの昼下がり

高卒で就職し、私が最初に足を踏み入れたのは自動車ディーラーの世界でした。 職種はサービスフロント。

お客様と整備現場を繋ぐ、いわば「窓口」です。

まだ右も左もわからない二十歳そこそこの私にとって、油の匂いが漂う工場と、そこに君臨する経験豊富な整備士の先輩方は、どこか畏怖の念を抱く存在でした。

それでも、休憩時間になれば話は別です。

車を愛してやまない先輩方と混ざって交わす、新型車の噂話。

それは新米の私にとっても、最高にワクワクする時間でした。

「5M(ゴーエム)」という響き

ある日の休み時間、工場の片隅で先輩たちが熱く語っていました。

今度発売される新型車に、メーカーが威信をかけて開発した2800ccの新型エンジンが搭載されるというのです。

これまでの2000ccは「M型」、2600ccは「3M型」。

改良を重ねるごとに数字が大きくなっていくのが、そのメーカーのエンジンの系譜でした。

「M、3Mと来て、今度の2800ccは……」

と先輩整備士Bさん。

「ついに、5M(ゴーエム)だな!」

先輩整備士Aさんの誇らしげな声が響きました。

「5Mか、すげえパワーだろうな……」と、

その場の空気が新時代のエンジンへの期待感で満たされた、その時です。

沈黙を破った「ごえむさん」

私の脳内には、最先端のエンジンとは正反対の、のどかな故郷の風景が広がっていました。

私の実家は小さな集落にあり、ご近所さんはみな「屋号」で呼び合っていました。

そして、私の家のすぐ前のお宅の屋号こそが、「五右衛門(ごうえもん)さん」

私たちは親しみを込めて、その家を「ごえむさん」と呼んでいたのです。

私:「あの……」 思わず言葉が漏れました。

「自分ちの前のおうちの屋号が、『ごえむさん』って言うんです」

先輩整備士Aさん「・・・」

先輩整備士Bさん「・・・??」

工場の喧騒が遠のいたかのような、静かな間(ま)がありました。

そして次の瞬間。

「……バカいってんじゃないよ!(笑)」

先輩たちが腹を抱えて爆笑しました。

最先端技術の結晶「5M」が、新米フロントマンの一言で、一瞬にして田舎の「五右衛門さん」にすり替わってしまったのです。

5Mエンジンと五右衛門さん

40年経っても消えない笑い声

あれから40年以上。

搭載されていた車がもはやクラシックカーと呼ばれる時代になっても、私は「5M」という文字を見るたびに、あの工場の笑い声と、実家前の「ごえむさん」の生垣を思い出します。

不器用で、言葉の使い方もおぼつかなかった新米の私。

あの一言は、今思えば先輩たちへの精一杯の「仲間入り」のサインだったのかもしれません。

皆さんの記憶の中にも、言葉の響き一つで一瞬にして「あの場所」へ引き戻されるような、可笑しな思い出はありませんか?

ちなみに、私の田舎に多かった『五右衛門』や『左衛門』という屋号。実はこの左右の違いには、驚くべき歴史的背景があるのをご存知ですか?気になる方は、こちらの解説をどうぞ。👉 [わーどっち:右衛門と左衛門の違い]

あの頃の熱いエンジン音を思い出すと、また当時の名車を眺めたくなりますね。これを見ながら晩酌するのも、大人の贅沢な時間かもしれません。 👉 【昭和の名車】懐かしの国産車たちが1冊に。当時の熱狂をもう一度]

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