「彼にシンパシーを感じる」「その考え方にシンパシーを覚えた」──こんな言い回しを耳にしたことはありませんか?日本語で使われる「シンパシー」は、相手に共感したり、親近感を抱いたりする場面でよく登場します。しかし、この表現は本来の英語 “sympathy” とは少し意味が異なります。
英語では “sympathy” は「同情」「哀れみ」といったニュアンスが強く、日本語で言う「共感」とはズレがあるのです。つまり、日本語の「シンパシー」は独自に解釈され、定着したカタカナ英語のひとつだと言えます。
本記事では、日本語での「シンパシー」の意味や使い方を整理しつつ、英語の “sympathy” との違い、さらに関連する「エンパシー」などの言葉もあわせて解説していきます。
日本語での「シンパシー」
日本語で「シンパシー」といえば、共感や親近感を抱くことを指すのが一般的です。英語の “sympathy” を直訳したというよりも、日本語の中で独自に広まったニュアンスだといえます。
主な意味
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共感:相手の気持ちや考えに「自分もそうだ」と感じること。
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親近感:相手との距離を近く感じ、心が通じ合うように思うこと。
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心のつながり:自分と相手の間に感情的な共通点を見つけること。
使用例
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「彼の生き方にシンパシーを覚える」
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「あの映画の主人公に強いシンパシーを感じた」
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「共感できる人が多いとき、人は安心感やシンパシーを得やすい」
ニュアンスの特徴
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ポジティブで柔らかい響きを持つ。
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同じ気持ちを共有しているイメージが強い。
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「共感」や「親近感」という日本語に置き換えても意味が通じる。
ポイント
日本語の「シンパシー」は、「同情」というよりも「心が通じる」「同じ気持ちを持つ」という肯定的なニュアンスで使われます。そのため、英語本来の意味からは少し離れており、カタカナ英語として独自に定着しているのです。
英語の sympathy の意味
「シンパシー」の元となった英語の sympathy は、日本語でイメージされている「共感」とは少し違います。
本来の意味
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同情・哀れみ:誰かがつらい状況にあるときに、その苦しみを理解し、気の毒に思うこと。
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寄り添う気持ち:相手の悲しみや不幸に対して「かわいそうだ」と感じる心情。
使用例
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I feel sympathy for him.
(彼に同情する) -
She expressed her sympathy to the victims.
(彼女は被害者にお悔やみを述べた) -
Our deepest sympathies are with you.
(心からお悔やみ申し上げます)
日本語との違い
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日本語の「シンパシー」= 共感・親近感
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英語の sympathy = 同情・哀れみ
👉 つまり「彼にシンパシーを感じる」と日本語で言うと「彼に共感する」の意味ですが、英語に直訳して I feel sympathy for him. とすると、「彼がかわいそうだ」というニュアンスになってしまうのです。
ポイント
英語で「共感」を正しく伝えたい場合は、sympathy ではなく “empathy” を使うのが一般的です。
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I empathize with you.(あなたに共感します)
この違いを知らないと、誤解を招く可能性があるので注意が必要です。
日本語とのギャップ
「シンパシー」という言葉は、日本語と英語でニュアンスが大きく異なるため、注意が必要です。
日本語の「シンパシー」
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意味:共感・親近感・心のつながり
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ニュアンス:ポジティブ、対等な関係で気持ちを共有する
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例文:「彼の考え方にシンパシーを覚える」= 共感する
英語の sympathy
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意味:同情・哀れみ
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ニュアンス:相手が弱い立場や不幸な状況にあるときに寄り添う
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例文:We feel sympathy for the victims.(被害者に同情します)
ギャップによる誤解
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日本語の「シンパシー」をそのまま英語にしてしまうと、意図が伝わらないことがある。
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例えば「私は彼にシンパシーを感じる」を直訳すると “I feel sympathy for him.” になり、「彼がかわいそうだ」という意味に変わってしまう。
正しく「共感」を伝えるなら
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英語で「共感」を表したいときは “empathy” を使うのが適切。
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I empathize with your feelings.(あなたの気持ちに共感します)
ポイント
日本語の「シンパシー」は「共感」ですが、英語の sympathy は「同情」です。このズレを理解しておかないと、特にビジネスや国際的な場面で誤解を招く可能性があります。
関連する言葉
「シンパシー」に関連して、日本語や英語でしばしば混同されやすい言葉があります。意味の違いを押さえておくと、より正確に使い分けられます。
エンパシー(empathy)
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意味:他人の感情を自分のことのように理解し、共感する力。
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ニュアンス:相手の立場に立って「心から共感する」という深い感情。
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使用例:I empathize with you.(あなたに共感します)
👉 日本語での「共感」に最も近い表現。
アフィニティ(affinity)
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意味:親近感、親和性、気が合う感じ。
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ニュアンス:共感というよりも「性質や好みが似ていて惹かれる」というイメージ。
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使用例:She has an affinity with nature.(彼女は自然に親近感を持っている)
👉 「趣味が合う」「なんとなく気が合う」といったときに使うのに近い。
シンパ(sympathizer)
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意味:ある思想や運動に共鳴・支持する人。
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ニュアンス:政治的・社会的な場面で使われることが多い。
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使用例:He is a sympathizer of the movement.(彼はその運動の支持者だ)
👉 日本語でも「シンパ」と略されると、やや政治的・思想的なニュアンスを帯びる。
ポイント
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シンパシー=日本語では「共感」、英語では「同情」
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エンパシー=本当の「共感」に相当する言葉
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アフィニティ=「親近感」や「気が合う」という軽いニュアンス
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シンパ=「支持者」や「同調者」を指す
こうして比較すると、似たように見えるカタカナ英語でもニュアンスがかなり異なることがわかります。
まとめ
「シンパシー」という言葉は、日本語では共感・親近感を意味し、相手に気持ちを重ねるポジティブな表現として定着しています。しかし、本来の英語 sympathy は「同情」「哀れみ」というニュアンスを持ち、日本語で使う「共感」とは大きなズレがあります。
英語で「共感」を正しく表したいなら、empathy を使うのが適切です。また、似た言葉として「アフィニティ(親近感)」や「シンパ(支持者)」などもあり、それぞれニュアンスが異なります。
つまり、「シンパシー」は日本語における独自のカタカナ英語であり、感覚的に使ってしまうと国際的な場面で誤解を招きかねません。言葉の背景や意味の違いを知っておくことで、より正しく、場面にふさわしい表現を選べるようになるでしょう。