「世間ずれしてるよね」って…どういう意味だと思いますか?
「世間ずれしてる人って、空気読めないよね」
「常識がない人=世間ずれ」
――そんなふうに思っていませんか?
日常会話やネットのコメント欄などで、「世間ずれ」という言葉が使われているのを目にすると、
「ちょっと浮いてる人」「ずれた感覚の持ち主」というようなネガティブな意味で使われていることが多くあります。
けれども実は、この「世間ずれ」という言葉、本来の意味とはかなり違った解釈で広まっているケースが多いのです。
「ずれている=間違っている・常識はずれ」といった短絡的な捉え方をしてしまうと、
本来のニュアンスや使いどころを誤ってしまうこともあります。
この記事では、「世間ずれ」という言葉の本当の意味、
なぜ誤解されやすいのか、そして正しい使い方について詳しく解説していきます。
「世間ずれ」の本来の意味とは?
「世間ずれ」は、一見すると「世間とずれている」と読めるため、
つい「世間知らず」や「常識が通じない人」といった意味で使ってしまいがちですが、
実際の意味はまったく逆といってもいいほど異なります。
辞書的な定義から見る「世間ずれ」
たとえば、『広辞苑』や『日本国語大辞典』では、「世間ずれ」について以下のように説明されています。
世間を知りすぎて、打算的・ずる賢くなること。また、そのような人や状態。
つまり「世間ずれ」とは、
-
社会経験が豊富になりすぎて
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純粋さや素直さを失い
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損得勘定で動くような、したたかさを身につけた状態を指すのです。
この“したたかさ”には良い面も悪い面もあります。
たとえば:
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人付き合いがうまく、交渉にも強くなる
→ ポジティブな世間ずれ -
自分の利益ばかり考えて、他人に冷たい
→ ネガティブな世間ずれ
いずれにしても、「世間をよく知っているがゆえに、人間味や誠実さが薄れている」と感じさせるようなニュアンスが込められています。
なぜ「非常識」「空気が読めない」と誤解されるのか?
ここで疑問に思う方も多いはずです。
「じゃあ、なんで“世間ずれ”が“非常識”とか“浮いてる人”って意味で広まっちゃったの?」と。
その背景には、以下のような誤解が影響しています。
「ずれ」という言葉の印象
「ずれている」という言葉には、
「違和感」「常識とのギャップ」「周囲との不一致」といった、マイナスなイメージが伴います。
そのため「世間ずれ」と聞いたときに、
-
「感覚が世間一般と違う人」
-
「場の空気が読めない人」
と連想されやすくなってしまうのです。
「世間知らず」との混同
似たような言葉に「世間知らず」がありますが、
これは「社会経験が乏しく、常識を知らない人」を意味します。
しかし「世間ずれ」は、「社会経験が豊富すぎて、人間的にこすれてしまった人」という逆の意味。
にもかかわらず、語感が似ていることで混同され、
「どっちがどっち?」とあやふやなまま使われていることも多いのです。
「世間ずれ」の正しい使い方と例文
ここでは、「世間ずれ」を本来の意味で使った例をいくつか見てみましょう。
共通するのは、「社会経験が豊富」「したたか」「世の中の裏表をよく知っている」といったニュアンスです。
使用例1
「彼は若いころから営業の現場を何十年も経験していて、すっかり世間ずれしてるよ。」
→ 社会経験が豊富で、駆け引きに強くなっていることを表している。
使用例2
「芸能界に長くいると、世間ずれしてしまうのも無理はない。」
→ 駆け引きの多い業界に適応して、人付き合いが表面的になったり、感覚が世間一般とは異なってくる様子。
使用例3
「一見まじめそうだけど、話してみるとけっこう世間ずれしてる感じがした。」
→ 外見と違い、実際はしたたかで打算的な一面が垣間見えるという印象。
いずれも、「世間を知らない」のではなく、世間を知りすぎて、素朴さを失っている状態です。
「世間ずれ」と混同されやすい言葉との違い
意味を混同しやすい他の表現と「世間ずれ」を比べることで、違いがより明確になります。
表現 | 意味 | 「世間ずれ」との違い |
---|---|---|
世間知らず | 社会経験が浅く、常識に欠ける人 | 真逆の意味。未熟で純粋なタイプ |
空気が読めない | 場の雰囲気に合わせた言動ができない人 | 経験に関係なく、場の感覚が弱い人 |
非常識 | 常識的な振る舞いができない人 | モラルやマナーに反しているという評価であり、経験量とは無関係 |
→ 「世間ずれ」は、これらとは異なり、経験が豊富すぎて“人間くささ”や“素直さ”を失ってしまった状態を指します。
まとめ
「世間ずれ」という言葉には、
一見“常識がない”や“感覚がズレている”といったイメージがあるかもしれませんが、
本来はまったく逆の意味を持っています。
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「世間ずれ」= 世間を知りすぎて、打算的・したたかになってしまった状態
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「世間知らず」や「非常識」とは意味もニュアンスも異なる
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経験によって身についた“世渡りの技術”が過剰になり、純粋さが薄れているような人に使う
このように、本来の意味を知らないまま使っていると、
相手に誤解を与えたり、自分の意図と違う印象を与えてしまうこともあります。
言葉は時代とともに変化するとはいえ、
正確な意味を知って使いこなすことは、信頼を得るための大切なスキルでもあります。
「世間ずれしてる」という評価が、
したたかな褒め言葉になるか、ずる賢いという批判になるか――
それを左右するのは、使う人の理解と場面の選び方なのです。