実際、多くの人がこのフレーズを耳にしたことはあっても、「具体的にどういう意味?」と聞かれると、答えに困ってしまうこともある言葉のひとつです。
しかも「合意」「同意」「了承」といった言葉とどう違うのかも、いまひとつはっきりしないことがあります。カタカナ語として便利な印象はあるものの、使い方を間違えると相手に伝わりづらくなることも。
この記事では、「コンセンサスを取る」の本来の意味や正しい使い方、似たような表現との違い、さらにビジネスシーンで使うときの注意点までをわかりやすく解説します。
なんとなく使っていた言葉も、意味を知ればもっと効果的に、そして適切に使えるようになりますよ。カタカナ語を正しく理解し、使いこなすことで、あなたのコミュニケーション力も一段とアップするかもしれません。
「コンセンサス」とは?意味を解説
つまり、「関係者全員が納得できる状態」「大きな反対がなく、おおむね意見がまとまっている状態」のことを指します。
たとえば、複数人でプロジェクトを進めるときに、全員が100%同じ意見でなくても「これなら進めても大丈夫」と思えるラインがあると、それが“コンセンサスが取れた”状態といえます。
この点が「同意」との違いです。「同意」は一人ひとりが納得して賛成することに重きがありますが、「コンセンサス」は“全体の調和”を重視します。多少の不満や意見の違いがあっても、プロジェクトを前に進めるための「集団の合意」として扱われるのです。
日本語では、「落としどころを見つける」「みんなで納得感を持つ」など、より感覚的な言葉で表現されることもありますが、ビジネスの場面では「コンセンサス」という表現が定着しています。
このように、「コンセンサス」は単なる了承や多数決ではなく、“全体のバランスと納得”を重視した合意形成のプロセスなのです。
「コンセンサスを取る」の使い方と例文
ここでの「取る」は、「得る」「形成する」といった意味合いで使われており、単に「伝える」「共有する」ではなく、お互いに納得した合意状態に持っていくプロセスを含んでいる点がポイントです。
たとえば、以下のような場面で使われます:
- 「この方針で進める前に、チーム全体でコンセンサスを取っておきましょう。」
- 「その企画については、上層部のコンセンサスを取ってから動きましょう。」
- 「変更内容について関係部署とコンセンサスが取れていないと、あとでトラブルになりますよ。」
このように、「コンセンサスを取る」という行為は、複数の関係者が納得し合意したという状態を作り出すことに重きが置かれています。
特にプロジェクトが複数部署をまたぐような場合や、社外のパートナーとの調整が必要なときには、「自分の考えを押し通す」のではなく、「相手の立場も理解しながら合意点を探る」という姿勢が重要です。
この言葉を使い慣れているとスマートに聞こえますが、同時にその裏側には“地道な調整や根回し”が必要であるという現実もあります。「コンセンサスを取る」=「信頼と関係性の構築」だと考えると、その奥深さがより伝わってきます。
「同意を得る」との違いは?
「同意を得る」は、基本的に“相手が自分の提案に賛成する”という一対一の関係を想定しています。たとえば「上司の同意を得る」「顧客の同意を得る」といったように、特定の相手から了承をもらう行為です。
一方で、「コンセンサスを取る」は、より集団的で、関係者全体の合意形成を目指す行為です。たとえ全員が100%同じ意見ではなくても、「これなら進めてよい」と感じられる共通理解を作り出すのが目的です。
言い換えると、「同意を得る」は“個人の了承をもらう”、 「コンセンサスを取る」は“集団での納得感を共有する”ことに重きがあると言えるでしょう。
また、「同意を得る」は“確認的”“受動的”な意味合いを含むのに対し、「コンセンサスを取る」は“調整的”“能動的”なアクションとして行われる場面が多く見られます。
特に組織内で新しい取り組みを始める場合など、トップダウンで一方的に進めるのではなく、現場や関係者の意見をすり合わせながら進める“ボトムアップ型”の意思決定において、「コンセンサスを取る」という言葉がしっくりくるのです。
この違いを知っておくことで、場面に応じた言葉選びがしやすくなり、誤解のないスムーズなコミュニケーションが実現しやすくなります。
ビジネスで「コンセンサスを取る」ときの注意点
まず、「全員の意見を100%一致させようとしすぎない」ことが大切です。コンセンサスとは、“全体として納得できるライン”を探ることが目的であって、“全員が完全に賛成すること”が必須ではありません。意見の違いや温度差があって当然です。
そのため、完璧な一致を目指しすぎると議論が長引いたり、決断のスピードが落ちたりすることがあります。ある程度の不満や留保を含んだままでも、全体として進行可能な状態であれば「コンセンサスが取れた」と判断するのが現実的です。
また、関係者が多くなるほど、情報共有や意見調整の手間が増えます。コンセンサスを取る際には、誰が“当事者”で誰が“参考意見の範囲”なのかを整理し、必要以上に範囲を広げすぎないことも効率化のポイントです。
さらに、形式的に「確認しました」「賛同しました」といったコメントをもらっただけで、実際には納得していないケースもあります。こうした“表面的な同意”ではなく、相手が本当に納得しているかを見極める対話力が求められます。
最後に、意見が割れてまとまらないときには、「合意形成のための代替案を提案する」「段階的に合意していく」など柔軟な対応が必要になります。
コンセンサスを取ることは、単なるステップではなく、信頼関係の構築プロセスでもあります。対話を通じてお互いの理解を深めながら進める姿勢が、最終的な成果にもつながっていくのです。
カタカナ語としての注意点と印象
まず第一に、「カタカナ語は意味があいまいになりやすい」という特性があります。「コンセンサス」という言葉自体、英語圏でも使われる言葉ですが、日本語として使われる場合にはその意味やニュアンスが曖昧なまま浸透しているケースもあります。
たとえば、新人や異業種の方に「この件、コンセンサス取っておいて」と言っても、「それって何をすればいいんだろう?」と戸惑わせてしまう可能性もあります。
また、カタカナ語は「わかりにくい」「横文字ばかりで疲れる」という印象を持たれることもあります。特に、年齢層が高い方や、堅実な職場文化のある企業では、日本語で「合意を得る」「みんなの納得を確認する」といった言い換えのほうが親切な場合も。
つまり、「コンセンサスを取る」という言葉はスマートでビジネスライクな響きがある一方で、使いどころや相手を選ぶ表現でもあるということです。
言葉は伝わってこそ意味があるもの。状況に応じて、より相手に伝わりやすい言葉を選ぶ意識を持つことが、円滑なコミュニケーションへの第一歩となります。
まとめ
ビジネスにおいては、プロジェクトの開始や意思決定、方向性の確認など、さまざまな場面でこの言葉が使われます。便利なカタカナ語として重宝される一方で、意味が曖昧なまま使われると、誤解やコミュニケーションの齟齬を招くことにもなりかねません。
「同意を得る」との違いや、ビジネスでの使い方の注意点、さらにはカタカナ語としての印象も踏まえて理解しておくことで、より的確でスマートな言葉遣いができるようになります。
相手の立場を尊重しながら、納得を得る姿勢を大切にすることで、「コンセンサスを取る」という行為は、単なる言葉のやりとりを超えて、信頼関係を築くための大切な手段にもなります。
これからも「コンセンサスを取る」をただの形式的なプロセスにせず、実りある合意形成の一歩として活用していきましょう。