「あの人、しれっと戻ってきたよね」
「しれっと値上げしてるの、気づいた?」
「失敗したくせに、しれっと話題変えたな…」
──何気ない日常会話の中で登場する「しれっと」という言葉。
でも、よく考えるとこの“しれっと”って、どんな意味?どういう気持ちで使ってる?
単なる「静かに」「目立たずに」ではなさそうだし、
かといって「ずるい」とも少し違う。
この記事では、
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「しれっと」の意味と語源に近いニュアンス
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実際によく使われる場面と例文
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類語との違いや、使い方の注意点
などをやさしく掘り下げていきます。
表面は“平静”、でも中身は“こっそり+図々しさ”
「しれっと」には次のような特徴が含まれています:
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本人はあくまで平然としている
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周囲の目を気にしていないように見える
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実はちょっと図々しかったり、ずるさを含んでいたりする
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でも、悪気があるとは限らない
つまり、「こっそり」と「図太さ」の間にある絶妙なラインを表す言葉なんですね。
「ばれないように」ではなく、「ばれても動じない」
たとえば…
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欠席続きだった人が、何事もなかったように会議に出てくる
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誰も話題にしていないのに、急に「しれっと」参加する
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値段が上がったことを堂々と告知せず、しれっと変えてある
これらの行動には共通して、**“何かを隠しているようで、別に悪びれてもいない”**という態度が感じられます。
「しれっと」は、そんな“静かなふてぶてしさ”や“気づかれない風を装った行動”を、やや軽めの皮肉や冗談まじりに表現するときに使われる、現代らしいことばとも言えそうです。
よく使われる場面と例文
「しれっと」は、日常のあらゆる場面で耳にすることが増えた言葉です。
ここでは、実際によくある使用例をいくつか挙げてみましょう。
例1:しれっと戻ってくる
「昨日まで音信不通だったのに、しれっと出社してるじゃん」
→ 本人は悪びれる様子もなく、まるで“何事もなかったように”出てきている
→ 周囲はちょっとモヤモヤするけど、本人は平然
例2:しれっと参加する・混ざる
「最初からいたかのように、しれっと輪に入ってきたね」
→ 招待されてないのに普通の顔して加わる、でも誰も強くは指摘できない
→ “ちゃっかり”に近い使い方
例3:しれっと値上げ・変更
「定食、100円値上げされてたけど、しれっとすぎない?」
→ お知らせもなく、気づいたら変わっている
→ お店側はあえて“目立たせずに済ませたい”意図が見える
例4:しれっとミスをごまかす
「あの人、ミスしたのにしれっと話題変えてたよね」
→ 謝罪も説明もなく、空気を読んでスルーしようとする
→ 上手くやっているようで、見てる人はちゃんと気づいている
これらの例に共通するのは、「誰かが“気づいてはいる”けれど、本人はとにかく何事もなかったようにやり過ごす」という構図です。
その態度が図太いのか、要領がいいのか、それともズルいのか…そのあいまいさも“しれっと”の面白さですね。
類語や似た表現との違い
「しれっと」は便利で軽やかな印象を持つ表現ですが、似た意味を持つ言葉もいくつか存在します。
ここでは「しれっと」と間違えやすい、または置き換えられそうな表現との違いを整理してみましょう。
「こっそり」との違い
表現 | ニュアンス |
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こっそり | 気づかれないように・バレないように行動する意識が強い |
しれっと | 気づかれても気にしない・平然と振る舞うニュアンスが強い |
「こっそり」はあくまで隠れる意識がありますが、「しれっと」は堂々としているようにすら見えるのがポイントです。
「ちゃっかり」との違い
表現 | ニュアンス |
---|---|
ちゃっかり | 利益を得る・抜け目ない・ずる賢い |
しれっと | 意図を見せずに行動する・自然に混ざる |
「ちゃっかり」は“得をする行動”にフォーカスしやすく、「しれっと」は“目立たず違和感なく行動する”ことに重きがあります。
「堂々と」との違い
表現 | ニュアンス |
---|---|
堂々と | 自信を持っている/誇りがある |
しれっと | 自信というより何事もなかったふりが中心 |
“態度がでかい”という印象は一部共通しますが、「しれっと」はあくまで無表情・淡々と振る舞うのが特徴です。
このように、「しれっと」は他の言葉とは似て非なる独自の立ち位置にある表現です。
図々しさ・要領の良さ・とぼけた感じが絶妙に混ざり合った、日本語らしい“温度のある言葉”とも言えるでしょう。
注意したい使い方と印象
「しれっと」は、軽妙でややユーモラスな響きを持つ一方で、使う場面や言い方によっては、皮肉っぽく受け取られるリスクもある言葉です。
笑いを含んだ“ゆるいツッコミ”として使う場合
「しれっと」はSNSや会話の中で、ちょっとした笑いを込めて使われることがよくあります。
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「しれっと元カノの話してくるのやめて(笑)」
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「しれっと予定変えてるけど、こっちは調整済みなんだが」
このように、相手の行動に気づいてはいるけれど、あえて軽く受け流すようなニュアンスで使うと、ユーモラスな雰囲気になります。
調子に乗ると“嫌味”に聞こえることも
しかし使いすぎたり、悪意がにじむ文脈で使うと…
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「しれっと手柄持っていったよね」
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「しれっと知らん顔してるけど、あなたのミスでは?」
このように、人を非難する表現として聞こえてしまうこともあるため、相手との関係性や空気感に注意が必要です。
フォーマルな場には基本不向き
「しれっと」はあくまで口語的・カジュアルな表現なので、
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ビジネス文書
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公式な場での説明
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目上の人との会話
などでは避けた方が無難です。
どうしても同様の意味で伝えたい場合は、「いつの間にか〜していたようです」「あくまで自然な流れで〜した」といった言い換えが必要になります。
「しれっと」は絶妙な距離感を演出できる言葉だからこそ、“軽さ”と“悪意”の境界線に気をつけたいですね。
まとめ
「しれっと」は、一見すると何気ない言葉ですが、
実は「こっそり」「堂々と」「ずうずうしく」「悪びれず」…そんな微妙な感情や行動を、あえて何事もなかったように振る舞う姿を表す、非常にニュアンス豊かな表現です。
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本人は平然としている
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周囲は「え、今の何?」と気づいている
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でも、あえて突っ込まずに流す空気感もある
そんな“ズルさ”と“可笑しさ”が同居しているのが「しれっと」の魅力。
だからこそ、SNSや日常会話でも「軽い皮肉」「ゆるいツッコミ」として多く使われているのでしょう。
ただし、使い方によっては人を傷つけたり、不快にさせたりする可能性もあるため、相手との距離感や場の空気に合わせた使い分けが大切です。
場面に応じて、上手に「しれっと」使いこなしてみてはいかがでしょうか?