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「しみったれ」とは?今ではあまり聞かない“昭和ことば”の深み

言葉・慣用句

「なんてしみったれた話だなあ」
「しみったれた生活も悪くないよ」

こうした表現を聞いたことがある人は、少なくなっているかもしれません。
「しみったれ」という言葉は、今ではほとんど使われなくなった昭和のことばのひとつ。
けれども、この言葉の奥には、日本人の「つつましさ」と「卑しさ」の境界線」が見えてくるのです。

本記事では、「しみったれ」という言葉の意味、語源、類語との違い、そして現代にどう受け継がれているかを深掘りします。

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「しみったれ」の意味と使われ方

「しみったれ」は、主に人の性格や態度、または状況を形容する言葉です。
意味としては次のようにまとめられます。

  • ケチくさい・貧乏くさい

  • 度量が小さい・心が貧しい

  • 行動や考え方に余裕がない

たとえばこんな使い方があります。

「そんなことで怒るなんて、しみったれた考え方だなあ」
「彼の部屋、なんだかしみったれてるね」
「しみったれた給料で、よくやってるよ」

つまり、“お金や気持ちにゆとりがない”状態をやや見下げたニュアンスで使います。
ただし、罵倒ほど強くはなく、どこか皮肉と哀愁の入り混じった表現なのが特徴です。

語源と成り立ち:「しみる」+「たれる」

「しみったれ」という言葉は、漢字で書くと「染みったれ」。
語源は、「しみる(染みる)」+「たれる(垂れる)」の組み合わせだと考えられています。

  • しみる(染みる):感情や状態が内側に浸透すること。ここでは“貧しさや情けなさがにじみ出る”という意味。

  • たれる(垂れる):下に垂れ下がる、こぼれ落ちる。姿勢の低さ・卑屈さを暗示。

つまり「しみったれ」は、

「貧しさや卑しさがにじみ出て、垂れ下がっているような様子」

を表す言葉だったのです。
どこか情けなくも人間味がある、そんな語感が漂います。

「ケチ」「セコい」との違い

「しみったれ」と似た言葉に、「ケチ」「セコい」があります。
どれも“お金や気持ちに余裕がない”ことを表しますが、ニュアンスは少しずつ異なります。

表現 主な意味 ニュアンス
ケチ お金を出し惜しむ 行動のレベルで“使わない人”
セコい ずるい・細かい 損得勘定ばかり考える人
しみったれ 精神的に貧しい 余裕がなく、全体が小さく見える人

つまり「しみったれ」は、単なる金銭感覚の問題ではなく、心のスケールの小ささを指しているのです。
「金持ちでもしみったれ」「貧乏でも心は豊か」と言えるのは、まさにこのため。

昭和の価値観と「しみったれ」文化

昭和の時代には、「倹約」や「質素」が美徳とされていました。
戦後の貧しい時代を乗り越えた世代にとって、「節約」は生きる知恵であり誇りでもあったのです。

しかし、その“つつましさ”が行きすぎて、

  • 極端に出費を嫌う

  • 人の幸せを妬む

  • 小さなことにこだわって柔軟さを失う
    といった状態になると、「しみったれてる」と言われたのです。

つまり、

「節約」と「しみったれ」の差は、心の余裕にあります。

お金がなくても「また頑張ろう」と笑える人は“質素”。
お金があっても不満ばかり言う人は“しみったれ”。
昭和語の中に、そんな人生観が隠れています。

「しみったれた時代」に見える現代の影

現代社会でも、「しみったれた考え方だな」という場面はあります。
たとえば、SNSで他人の成功を妬んだり、
他人の行動を小さく非難したりする——
それもまた、“心の貧しさが滲む行為”としての「しみったれ」と言えるでしょう。

皮肉にも、物質的には豊かな現代でこそ、
精神的な「しみったれ」が増えているのかもしれません。

現代での言い換えと再評価

今、「しみったれ」という言葉をそのまま使うと、やや古臭く響くかもしれません。
ですが、言い換えると次のような表現になります。

  • 「小ぢんまりしている」

  • 「控えめ」

  • 「堅実」

  • 「慎ましい」

これらはすべて、ポジティブな“しみったれ”の側面です。
無理せず、見栄を張らず、自分のペースで暮らす——
そんな“令和の質素さ”の中に、
かつての「しみったれ精神」が静かに息づいているのかもしれません。

まとめ

「しみったれ」は、
単なる“ケチ”ではなく、心の余裕を失った状態を指す言葉。

  • もとは「しみる」+「たれる」=貧しさが滲み出る意。

  • 「ケチ」「セコい」とは異なり、精神的な貧しさを表す。

  • 昭和では“倹約”と紙一重の価値観。

  • 現代では“控えめ”や“慎ましさ”として再評価もできる。

使う人が減っても、「しみったれ」という言葉の中には、
人間らしい弱さと可笑しさ、そして時代の匂いが詰まっています。
少し古びたこの言葉を、今一度“味わうように使う”のも、悪くないかもしれません。

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