「ぴえん」「ぱおん」という言葉をSNSや会話の中で耳にしたことはありませんか?一見すると子どもの泣き声のような響きですが、実は近年、若者の間で広がったユニークなスラング表現です。
「ぴえん」はちょっとした悲しみや寂しさを軽く表すときに使われ、そこから派生して「ぴえん超えてぱおん」といった言い回しまで生まれました。実際には本気で泣いているときに使うというより、冗談めかして「悲しい気持ちを笑いに変える」ときに使われるのが特徴です。
こうした言葉の進化は、SNS時代のコミュニケーションの軽さや、感情をデフォルメして楽しむ文化を象徴しています。本記事では、「ぴえん」の誕生から「ぱおん」への広がり、さらに派生語までを追いながら、その背景にある若者文化の面白さを探っていきます。
「ぴえん」とは?
「ぴえん」は、泣き声を模した擬音から生まれた若者言葉です。もともとはネット掲示板やSNSで軽い悲しみや寂しさを表現するために使われていましたが、絵文字(🥺)との組み合わせによって一気に広まりました。
意味
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軽い悲しみや寂しさ:「ちょっと悲しい」「切ない」
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弱音や甘え:「助けてほしい」「かまってほしい」
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可愛らしさの演出:「泣きそうだけど愛嬌がある感じ」
使用例
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「宿題忘れた、ぴえん」
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「推しに会えなくてぴえん」
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「財布落としてぴえん🥺」
ニュアンスのポイント
「泣いてしまうほど悲しい」よりも、大げさに弱さを見せて笑いに変えるのが特徴です。深刻な悲しみを語る場面では使われず、むしろ「軽い悲しみを共有する」「かわいく愚痴る」ときに用いられます。
流行の背景
2018年頃からSNSやJK用語として広まり、2020年には「ぴえん」を題材にしたホラーゲーム『PIEN』が登場したことでも話題になりました。言葉としてだけでなく、ポップカルチャーにまで影響を与えた点がユニークです。
「ぱおん」とは?
「ぱおん」は「ぴえん」の派生語で、より大げさに悲しみを表す表現として生まれました。象の鳴き声「パオーン」に由来するとされ、泣き声を強調するユーモラスな進化形です。
意味
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「ぴえん」よりさらに強い悲しみ
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大泣き、絶望、ショックを誇張して表す
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本当に泣いているというより、ネタっぽく悲しみを強調するときに使われる
使用例
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「スマホ落として画面バキバキ…ぱおん」
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「推しが活動休止、ぱおん」
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「徹夜で勉強したのに寝坊した、ぱおん」
ニュアンスのポイント
「ぴえん」がかわいらしい弱音を示すのに対し、「ぱおん」はよりコミカルで大げさな響きを持っています。真剣な悲しみではなく、笑いを交えながら“泣きを入れる”ときに使われやすいのが特徴です。
流行の広がり
「ぴえん超えてぱおん」というフレーズとしてSNS上で一気に拡散しました。「超えて」という言い回しが加わることで、表現の段階がアップするような面白さがあり、若者の遊び心を反映しています。
さらに広がる派生語
「ぴえん」から「ぱおん」へと発展した泣き顔系表現は、SNSの中でさらに多彩な派生語を生み出していきました。若者文化ならではのユーモアや言葉遊びが、拡散の原動力になっています。
「ぴえん超えてぱおん」
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最も有名な派生表現。
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「ぴえん」より強い悲しみを、さらに段階的に大きく表現する言い回し。
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使用例:「テスト全部赤点、ぴえん超えてぱおん」
「ぴえんこえてぱおんこえて…」
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ネタ的にどんどん拡張され、「ぴえんこえてぱおんこえてズンドコベロンチョ」というフレーズがネットミーム化。
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意味は特にないが、言葉の勢いと響きの面白さで拡散。
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「悲しみを超越してわけの分からない状態」を笑いに変える遊び。
「ぴえんヶ丘どすこい之助」
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SNSで生まれたジョーク表現。
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もはや泣き顔というより、ただのネタ名前化。
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「かわいい悲しみ」を過剰にデフォルメした結果の産物。
派生語の特徴
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意味よりも響きの面白さが重視される
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「悲しい」を伝えるというより、「ネタで盛り上がる」ために使われる
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SNS文化特有の「インフレ的な言葉遊び」
使われる文脈
「ぴえん」や「ぱおん」といった泣き顔系の表現は、単に悲しみを表すだけでなく、ユーモアや軽さを伴ったコミュニケーションツールとして使われています。
軽い悲しみや不満を表すとき
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本当に深刻ではない、日常の小さなトラブルや不満に使われます。
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「電車に乗り遅れた、ぴえん」
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「推しのグッズ売り切れでぱおん」
👉 悲しい気持ちを深刻にしすぎず、むしろ「笑いに変える」ための使い方。
ネタ・冗談として
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本当は全然困っていないのに、あえて「ぴえん」「ぱおん」と言って笑いを取る。
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「アイス落とした、ぴえん超えてぱおん」
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「宿題めんどくさい、ぱおん」
👉 友達同士やSNSでの“ノリ”として多用されます。
自虐的な表現
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自分の失敗や弱さを「かわいく」「おどけて」見せたいときにぴったり。
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「告白できなかった、ぴえん」
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「徹夜したのに寝坊してぱおん」
👉 自分の弱みをそのまま言うより、明るく笑いに変えられる効果があります。
本当に深刻な悲しみには使わない
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「身近な人の死」「重大な事故」などのシリアスな場面ではほぼ使われません。
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あくまで軽さやユーモアを含んだ悲しみ表現に限定されるのが特徴です。
ポイント
「ぴえん」「ぱおん」は、ただの泣き言ではなく、“悲しみを笑いに変える若者文化”の象徴。使うことで場を明るくし、仲間との距離を縮める効果を持っているといえます。
まとめ
「ぴえん」は軽い悲しみや寂しさをかわいらしく表す言葉として登場し、やがて「ぱおん」という大げさな派生語に進化しました。さらに「ぴえん超えてぱおん」や「ぴえんこえてぱおんこえてズンドコベロンチョ」といった表現へと拡張し、SNS文化ならではの言葉遊びとして浸透していきました。
これらの表現は、本当に深刻な悲しみを語るものではなく、「悲しみをユーモラスにデフォルメして共有する」ためのツールです。日常の小さな不満や愚痴、自虐的な失敗談をかわいく、または笑いに変える効果があります。
「ぴえん」「ぱおん」の進化をたどると、単なるスラングを超えて、若者がSNSで感情を共有し合うスタイルや、言葉を遊びに変えて楽しむ文化が浮かび上がってきます。言葉そのものがコミュニケーションを盛り上げるエンターテインメントになっているのです。