「この件、ちゃんと根回ししておいてね。」
ビジネスの現場でこんなセリフを耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
「根回し」という言葉は、プロジェクトを円滑に進めるために欠かせないビジネス用語ですが、一方で「裏でこっそり進める」「姑息な手段」といった、少しネガティブな印象を持たれることもあります。
実は「根回し」という言葉には、本来の意味と誤解されやすい使われ方があり、正しく理解しておかないと、誤ったイメージを与えてしまうことも。
この記事では、
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「根回し」の正しい意味と由来
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ビジネスシーンでの実際の使い方
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ネガティブに受け取られないコツ
などをわかりやすく解説していきます。
根回しの本来の意味と語源
「根回し」は、もともと植物の栽培や移植の際に使われる園芸用語です。木を植え替えるとき、いきなり掘り起こしてしまうと根が傷んで枯れてしまいます。そのため、あらかじめ周囲の土を掘り、根を整理して準備をしておく作業を「根回し」と呼びました。
このイメージが転じて、
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物事を進める前に、あらかじめ関係者に話を通しておく
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後のトラブルを防ぐために、事前に調整しておく
といった意味で使われるようになりました。
本来の意味
「根回し」の本来の意味は、
「物事を円滑に進めるために、事前に関係者と調整・交渉すること」
です。
決して「ズルいこと」「裏でこっそり進めること」だけを指すのではなく、むしろトラブルや摩擦を避け、円満に物事を進めるための大切な準備作業なのです。
ポイント
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準備・調整が中心であり、陰でこそこそ進める「裏工作」とは違います。
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良い結果を得るための前向きな行動と位置づけるのが本来の使い方です。
現代の使われ方と誤解されやすい点
「根回し」は現在、ビジネスシーンを中心にさまざまな場面で使われていますが、その使われ方には誤解やネガティブなイメージがつきまとうこともあります。
よくある使い方
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プロジェクト前の調整
「新規事業の提案前に、部長たちへ根回しを済ませた」 -
会議での合意形成
「会議が紛糾しないよう、事前に根回ししておく」 -
トラブル防止のための事前交渉
「顧客対応の方針を決める前に、営業部と根回しを行う」
誤解されやすい点
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「裏工作」と混同されがち
「根回し」という言葉を聞くと、
- 裏で手を回している
- 不正なことをしている
というイメージを持つ人も少なくありません。しかし、本来は透明性のある準備行動であり、不正やズルさを意味するものではありません。 -
「八方美人」「迎合」的な印象を持たれることも
関係者全員に話を通す様子が、「誰にでもいい顔をしている」と受け取られることがあります。これは、根回しの目的や進め方がきちんと説明されていない場合に起こりやすい誤解です。 -
「何でもかんでも必要」と思われがち
すべての案件で根回しが必要なわけではなく、状況に応じて判断することが大切です。むしろ、やりすぎると「回りくどい」「効率が悪い」と思われることもあります。
まとめると:
根回しは、物事を円滑に進めるための事前準備であって、決してズルいやり方ではないということ。大事なのは、透明性と信頼感を持って行うことです。
根回しを上手に進めるコツ
根回しは、ただ単に「事前に話を通せばいい」というものではありません。**やり方ひとつで、信頼を得ることもあれば、逆に不信感を招くこともあります。**ここでは、上手に根回しを進めるためのポイントを紹介します。
1. 関係者を正確に把握する
根回しを行う際、誰に話を通すべきかを見誤らないことが重要です。
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決定権を持つ人
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実務を担う人
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影響を受ける人
など、ステークホルダーをしっかり把握することが第一歩です。
2. タイミングを見極める
根回しは、早すぎても遅すぎても逆効果です。
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早すぎると: 情報が不確定で混乱を招く
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遅すぎると: 既成事実のように見え、反発を招く
適切なタイミングを見極めて動きましょう。
3. 透明性を持って進める
「裏でこっそりやっている」という印象を与えないために、情報共有の範囲や目的を明確に伝えることが大切です。
例:「事前に皆さんの意見を伺っておきたいと思いまして…」
4. 相手の立場や意見を尊重する
根回しは、単に「同意を取り付ける場」ではなく、意見交換の場でもあります。相手の意見にきちんと耳を傾けることで、信頼関係を深めることができます。
5. 記録を残しておく
誰とどんな話をしたのか、簡単なメモを残しておくと、後のトラブル防止になります。特に大きな案件では、やりとりの履歴を残しておくと安心です。
上手な根回しは、プロジェクトの成否を左右する大事なスキルです。単なる「前準備」ではなく、信頼構築の一環と考えるとよいでしょう。
根回しが必要な場面と不要な場面
根回しはとても有効な手段ですが、**どんなときでも必要というわけではありません。**むしろ、状況によっては根回しをしないほうがスムーズに進むケースもあります。ここでは、根回しが求められる場面とそうでない場面を見ていきましょう。
根回しが必要な場面
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社内の重要な意思決定
新規事業、組織再編、大きな予算の変更など、多くの関係者が影響を受ける場合は必須です。 -
複数部署をまたぐプロジェクト
部署ごとの意向や都合を事前に確認しておくことで、摩擦を防げます。 -
会議や提案の前
会議本番で反対されるのを避けるため、事前に関係者と意見をすり合わせるのが有効です。 -
社外との取引や交渉
特に社内で承認を得る必要がある取引では、根回しをしておくと承認プロセスがスムーズに進みます。
根回しが不要(または慎重にすべき)な場面
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小さな日常業務
毎日のルーチンワークや少額の経費精算などは、根回しする必要はありません。 -
緊急対応が必要な場面
即時対応が求められる場面では、根回しをしている時間がないこともあります。この場合は後から説明・共有することが優先されます。 -
明確なルールやマニュアルがあるとき
すでに決められたプロセスがある場合は、根回しよりもそのルールに従うことが優先されます。 -
機密性が高い案件
情報の取り扱いが慎重に求められる案件では、むやみに根回しを行うと情報漏洩のリスクが高まります。上層部などごく一部の人に限定して行う必要があります。
このように、根回しは万能な手段ではなく、場面を見極めて行うことが大切です。「やるべきか迷ったら、一度上司や信頼できる人に相談する」のも良い判断材料になります。
まとめ
「根回し」は、ビジネスの現場では欠かせない重要なスキルのひとつです。本来は、物事をスムーズに進めるために事前に調整や交渉をしておくことを意味し、ズルいやり方や裏工作とは異なります。
この記事では、
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根回しの本来の意味と語源
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現代での使われ方と誤解されやすい点
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上手に進めるコツ
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必要な場面と不要な場面の見極め方
を解説してきました。
根回しは、やり方を間違えると「こそこそした動き」と誤解されるリスクもありますが、透明性を持って信頼関係を築くツールとして活用できれば、あなたの評価やプロジェクトの成功率がぐっと高まるはずです。
場面に応じて適切に使いこなし、スマートに仕事を進めていきましょう。