せっかく一生懸命やったのに、結果はゼロ。
いや、むしろ疲れただけ。時間も体力も気力も削られて、何も残らなかった――
そんなむなしさを、的確かつ少しユーモラスに表現したのが「骨折り損のくたびれもうけ」ということわざです。
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「骨を折った」=がんばった
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「損」=見返りがない
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「くたびれもうけ」=疲れただけで得たものはゼロ
日常でも案外よくあるこの状況。
ただの「徒労」に終わっただけではなく、ちょっとした悔しさや自虐も込められた、絶妙な表現なんです。
この記事では、
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「骨折り損のくたびれもうけ」の意味と語源
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使い方の例と、似たことわざとの違い
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現代にも通じる“報われなさ”の言葉としての魅力
について、わかりやすく解説していきます。
「骨折り損のくたびれもうけ」の意味とは?
「骨折り損のくたびれもうけ」とは、
一生懸命に努力したにもかかわらず、何の成果も得られず、疲れただけで終わってしまったことを表すことわざです。
言葉の構造から見る意味
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「骨折り」…苦労や努力、力を尽くすこと
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「損」…見返りや報酬が得られない状態
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「くたびれ」…疲れや消耗
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「もうけ」…ここでは“得たもの”という意味
つまり、直訳すると「苦労して損したうえに、得たのは疲れだけ」という意味になります。
ニュアンス的には「がんばったのに報われない」
単なる“失敗”とは少し違って、
「努力そのものには意味があったはずなのに、結果がついてこなかった」
あるいは、「まったく無意味なことをがんばってしまった」という、徒労感やむなしさをにじませる言葉です。
使う場面の例
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長時間かけて企画書を作ったのに、採用されずに即却下された
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念入りに準備したのに、当日にイベントが中止に
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家族のために買い物したのに「それじゃない」と言われた
こういった、頑張った本人にとっては残念な結末に使われます。
このことわざの語源と成り立ち
「骨折り損のくたびれもうけ」は、見た目のとおり「骨折り損」と「くたびれもうけ」という二つの表現を組み合わせた、重ね言葉のようなことわざです。
それぞれの成り立ちを見ていくと、このことわざの持つニュアンスがより深く理解できます。
「骨折り損」とは?
「骨を折る」は、現代でも使われるように「苦労する」「努力する」の意味。
「骨折り損」はその努力が結果に結びつかなかった、つまり苦労が無駄に終わったことを意味します。
「くたびれもうけ」とは?
「くたびれる」は、疲れる・消耗すること。
「もうけ」は“利益”や“得たもの”を意味しますが、ここでは皮肉を込めて「得たのは疲れだけ」という意味合いで使われています。
江戸時代にはすでに広く使われていた
この言い回しは江戸時代以前から存在し、落語や小説などにも登場します。
人々の日常の中にある“損な苦労”を、ユーモラスに皮肉る表現として親しまれてきました。
当時の人々も、無駄な努力や報われない苦労に対して、こんなことばで笑い飛ばしていたのかもしれません。
使い方の例文
「骨折り損のくたびれもうけ」は、やや古風な言い回しですが、今でも十分に使える表現です。
ここでは日常生活における使いどころや、使う際のちょっとしたコツを例文とともに紹介します。
実生活での使用例
【仕事編】
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プレゼン資料を徹夜で仕上げたのに、先方の都合で会議が中止。まさに骨折り損のくたびれもうけだった。
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クレーム対応で一日動き回ったけど、結局原因はうちじゃなかった。骨折り損のくたびれもうけだよ…。
【家庭編】
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子どものために手の込んだ弁当を作ったのに、「パンがよかった」と言われた。骨折り損のくたびれもうけ…。
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夫の誕生日に高級料理を用意したら、出張で不在。完全に骨折り損のくたびれもうけ。
ユーモアを込めて使うと柔らかい印象に
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あ〜あ、気合い入れて片付けたのに、誰にも気づかれないなんて。骨折り損のくたびれもうけ!
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応募したキャンペーン、張り切ってレシート集めたけど全部ハズレ。骨折り損のくたびれもうけですな〜。
このように、軽く自分を笑うようなトーンで使うと、ネガティブになりすぎず自然に使えます。
注意点:相手に対して使うときは慎重に
人の努力に対して「骨折り損のくたびれもうけだったね」と言ってしまうと、
場合によっては馬鹿にしているように受け取られることがあります。
あくまで自分自身の行動に対して使うのが基本です。
似た意味のことわざと比較
「骨折り損のくたびれもうけ」と同じように、努力が無駄に終わることや徒労感を表すことわざや表現はいくつか存在します。
ここでは似た言葉と比較しながら、その違いや使い分けのポイントを見てみましょう。
「徒労に終わる」
【意味】
努力や苦労がすべて無駄に終わってしまうこと。
より形式的・ビジネス的な場面でも使える表現です。
【違い】
「骨折り損のくたびれもうけ」よりもやや堅めで、感情のトーンが抑えられています。
無表情で結末を伝える感じ。
「 無駄骨を折る」
【意味】
せっかくの苦労が実を結ばないこと。
日常会話にもよく登場し、「骨折り損」と近い表現です。
【違い】
語感がシンプルで短いため、会話の中でさらっと使えるのが特徴。
「くたびれもうけ」のような皮肉やユーモアの要素は薄め。
「 損して得取れ」
【意味】
一時的な損はしても、長い目で見れば大きな利益になるという教訓。
ポジティブな意味合いを持つことわざです。
【違い】
「骨折り損のくたびれもうけ」とは正反対の考え方。
努力が報われないどころか、「むしろ得になる」という前向きさが際立っています。
これらと比べると、「骨折り損のくたびれもうけ」はちょっとした自虐や皮肉を込めて使える、ややユーモラスな響きが魅力です。
まとめ
「骨折り損のくたびれもうけ」は、一生懸命努力したにもかかわらず、何の成果も得られず、疲れただけで終わってしまったという、残念な状況を表すことわざです。
語源をひもとくと、
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「骨折り損」=努力が無駄になること
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「くたびれもうけ」=疲れだけが手元に残ったこと
という、どちらも“報われなさ”を含んだ言葉が重ねられた、絶妙に切ない表現だとわかります。
使い方としては、自分の失敗や徒労をユーモアを交えて語るのに適しており、
「やってらんないけど、まあしょうがないか」と気持ちを切り替えるきっかけにもなります。
似た意味のことわざとの違いも知っておくと、使い分けに深みが出ます。
頑張ったのに報われなかったとき、落ち込みすぎる前に、
「いや〜骨折り損のくたびれもうけだったよ」と、ちょっと笑ってみる。
そんな日本語の余裕も、案外大事なのかもしれませんね。